最高裁判所に提出予定の「主張書面」です(その2)

前回の続きです。 

 

 

第2 表現行為の特定について
1 本件ツイートは,「予告編」の記載に続けて,「本編」部分の記事のリンクを貼っており,リンクの中身を取り込んだ,或いは,読者がリンク先の記事を読むことを前提とした表現行為になっています。
これに対し,表現行為の後に,単なる「参考ウェブサイト」として,リンクが貼られることもあります。この場合のリンクは,参考のために貼られているものにすぎず,表現行為を構成するものではありません。
2 本件ツイートは,「本編」部分の中身も取り込んだ表現行為であるため,本件ツイートによってした表現行為を特定するためには,「本編」部分の記事を特定する必要があります。
 ところが,本件申立書の「申立ての理由」では,リンクを貼った記事のURLが記載されていませんから,私のした表現行為が正確に記載されたものとはいえません。そこで,私は,「申立ての理由」のうち,私のした表現行為について記載した部分についても,否認せざるを得ません。
 なお,表現行為は,その一部だけを切り取ると,全く別の意味になることがありますから,表現行為の一部だけを切り取って,その部分のみを非違行為とすることは絶対に許されないというべきです。
3(1) URL先の記事を表現行為に取り込むということについては,具体例で説明した方がわかりやすいと思います。
 私は,2008年からツイッターを続けており,毎日,20個程度のツイートをしていましたから,単純計算でも,これまで,7万3000個のツイートをしたことになりますが,その中から,一例を用いて説明したいと思います。
(2) 私は,過去に,こういうツイートをしたことがあります。

 「心は「ちんちん」の近くにあるんだね。
  https://twitter.com/seikoito/status/651419764699480066

 このツイートは,本文だけを読むと,とても品のない文章のように思われます。
 ところが,貼られているURLをクリックすると,そこには,いとうせいこうさんの,次のようなツイートが現れます。

「祖父江さんが『こころ』の装丁した時の話、面白かった。「心」の象形文字が心臓より「ちんちん」に似てることにこだわり、古代中国で心が丹田にあったことを突き止める。」

 また,このいとうせいこうさんのツイートには,その象形文字の画像も添付されており,それを夏目漱石が初版に用いたことなども説明されていますが,その画像は,確かに,幼児が描いた男性器のような形をしています。
(3) このように,上記の私のツイートは,リンクの中まで読むと,「ちんちん」というのが,ブックデザイナーである祖父江慎さんが用いた表現であり,しかも,当該象形文字の説明としてぴったりな表現であることがわかるのです。
(4) また,上記の私のツイートは,読者を驚かせるという効果も狙っています。
 上記の私のツイートを見た読者は,私が「ちんちん」という下品な表現をしていることに,最初は,とても驚きます。
 ところが,リンクの中まで読むと,私が下品な表現をしたのではなく,記事の内容を適切に要約したにすぎないことがわかるのです。
 このように,読者を,一瞬,或いは,一見驚かせた上で,リンクの中を見せることでその「種明かし」をするという手法は,私が10年間,繰り返し行ってきた手法であり,読者は,そのカラクリ自体を楽しんできました。
(5) しかしながら,私のツイートのうち,URLの部分を削除し,「心は「ちんちん」の近くにあるんだね。」の部分だけを表現行為であるとしてしまうと,私が,とても下品な表現行為をしたものと評価されかねません。
 そして,現に,上記の私のツイートは,私が最初に厳重注意処分を受けたとき,品のないツイートであるとして問題視されたことがあるのです。
 その際,このツイートは,「心は「ちんちん」の近くにあるんだね。」の部分だけが切り取られ,私がした品のないツイートの一例として,東京高裁の事務局が作成した報告書に載せられ,当時の東京高裁長官に提出されました。
 このように,表現行為の一部だけが切り取られ,あたかも私がとても品のないツイートをしているかのような印象を東京高裁長官に与えるということが,東京高裁事務局によってされたことが過去にあるのです。
(6) なお,厳重注意処分に対しては,不服申立ての機会が与えられません。
そうであれば,私が過去に2回厳重注意処分がされたということを今回の分限裁判において考慮することは,一事不再理原則に反して許されないのみならず,手続保障の見地からも許されないというべきです。
 上記の厳重注意処分の際には,裁判所職員が,私の過去のツイートをしらみつぶしに調べて,それをリストアップして文書を作成しましたが,そのリストの中には,私が,ツイッター上ではすぐに削除した,いわば「書き損じ」にすぎないツイートを,裁判所職員がツイログから「発掘」したものまで含まれていました。
「書き損じ」まで厳重注意処分の対象にすることは相当でないと思われますが,不服申立て手段がないため,私には,そのような主張をする機会すらなかったのです。

                               (第三に続く)