ランダムさんのレビューです。最高裁に告ぐ

いまこの国の司法で何が起きているのかを知る必読書

「専門用語(法曹)も極力削ってあるのか、私たち市井の人々にも十分にわかりやすく、とても読みやすい内容です。

こんな特異な本があるのでしょうか。ブリーフサイバンチョこと岡口基一高裁判事による、体を張った「日本国三権が頂の一つ、最高裁判所と司法の現状ルポ」といった内容です。
俗っぽく書くと「高等裁判所の裁判長が最高裁判所で被告になる」という珍しい裁判でした。

※以下一部うがった書き方をしていますがご容赦ください。
ざっくり箇条書きすると、
高等裁判所の裁判官がブリーフ一張でツイッターにデビュー
・エロエロなツイートするね!と思いきやそれは数回で、あとはほぼ法曹界勉強用の判例や法解釈に関する紹介ツイート
・裁判所、とにかくブリーフサイバンチョのツイッターを閉鎖したい模様
・揚げ足取り始まる(所属の高裁によるパワハラ
・論点不明(反論すらできない内容)で処分裁判(分限裁判)が開始される
・こんな法手続きに則っていない裁判はありえないので当然勝訴すると思っていた岡口さん
・まさかの最高裁岡口分限決定(処分決定の敗訴)
・アクロバティックこじつけ有罪判決(と、私は何度読んでもそう感じました)
・弁護士ドットコムの多くの弁護士(実に91%)が「処分不当」とアンケートに回答
・さらに岡口さんを裁判官や法律家をやめさせようと裁判官訴追請求へ(現在進行中)
・本当の問題点はなにか?
・司法で今起きていること、最高裁は今どんな組織なのか
・これからの展望

ここからは感想です。
分限裁判の被告となった著者による、最高裁に対する怨嗟の声ではなく、明るい文体で、「何が起きてるの!?これはさすがにまずすぎるでしょう!法治国家としてありえない」という驚きとその事実の羅列、淡々とした批評で構成されていて読みやすいです。
私は、本来憲法や法律は思想があってそれを承けた文面があって、それらが日本人全員を互いに守っていると信じていました。その法律を作るのが我らが立法府、その文面を専門の法律家が解釈し、個々の権利や財産を守る手続きが裁判であり、裁判所の役割だと理解していました。そのことで社会全体の秩序が保たれているのだと。
しかし裁判所の最高機関である「最高裁判所」が、下級機関の裁判官に対し、法も捻じ曲げ思想も無視し、組織の論理だけでパワハラを追認するという事実。
判決文を読むと、アクロバティックとしか言えないような無茶苦茶なこじつけ理由で有罪にしています。しかも審議中にその話をしないという最初から処分ありきの裁判です。
これは会社に置き換えるとわかりやすい。上司の不遜を買った、だから処分。という話です。
しかし、これは裁判所での出来事です。何が正しくて何が正しくないかは、上司の気分や気持ちではなく「法律」であるべきです。
そうでなければ私たちはどうして社会人生活でパワハラの訴えを裁判所に起こせるでしょうか。会社等の組織で起きるパワハラを、法律や人権保護の観点で正しく裁くのが裁判所ではないのか、最高裁判所が平気でパワハラを追認する事実を、それも法を捻じ曲げてやるんだということを知る必要があります。

『職務上優位な立場を利用して、個の自由と権利を侵害、制限し、それに従わなければ不利益を与えると脅す』のを最高裁判所が合法手続きとしてやるのです。拙い例えですが、消防庁長官含む幹部が15名揃って街に火を付けて回るような所業です。

私は、最高裁判所は信頼できないと感じます。ことパワハラに関しては別の防護策が必要です。法律も裁判所も守ってくれないなら、そうせざるを得ないだろうと思います。

最後にこの事件の結論としてもう一言だけ書かせてください。
調子に乗ったツイッター裁判官を無理やり処分した本分限決定は「裁判所と司法に対する国民の信頼を損ね、また裁判の公正を強く疑わせるものでもあるといわざるを得ない。」

 

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