「人を傷つけるような表現は許されないのか」 by松井茂記ブリティッシュコロンビア大学教授

「誰かを傷つける意図はなかったが、結果的に、その表現によって誰かが傷ついたという場合に、法的責任を認めることは許されるべきではない。それは、裁判官の弾劾裁判でも同様である。誰も傷つかないようにしないといけない社会では、表現の自由はあり得ない。表現とは、原理的に誰かを傷つける可能性をはらんでいるからである。
弾劾裁判所が、(岡口罷免)判決の中で、被害者を傷つける意図を否定し、投稿発言の違法性を否定しておきながら、結果的に、それを「非行」と判断し、しかも、罷免に値するほど重大な「非行」と判断したことには、どう考えても無理を感じざるを得ない。」



岩波書店の雑誌「世界」2024年6月号219頁